「同じ空の下で…」
「…は、はい。承知しました。」
そう答え、ごく自然に立ち上がり、常務の方を向いて言葉を選びながら答えた。
常務は真っ直ぐに私の顔を見て居て、相当な心拍数の上昇と手に汗を握る想いで口を開いた。
「…至らぬ点も多々あるかと思いますが、精一杯…プロジェクトの皆さまの為に努めさせていただければと思っています。この度は大変ありがたいお言葉を頂戴しまして…大変嬉しく思います。プロジェクトの一員として、働かせて頂きます…。」
深呼吸を繰り返しながらも失礼のないような言葉を一生懸命に並べて、私は答えた。
常務の顔色を伺えば、何とも言えないような笑みを湛えていた。
「そうか。引き受けてくれるんだな?」
「はい。宜しくお願い致します。」
「そうかそうか。それでは、方々に報告をするとしよう。今までのポストと兼任とは、大変な任務になるかも知れんが君の力を信じての事だ。英君ならこなせるはずだ。頑張ってくれると期待してるよ。」
「…ありがとう、ご…ございますっ!頑張りますっ!」
その声はどっか上ずった声になってしまって、私は自分に思わず笑いたくなった。
常務はまず外線をかけ始め、直感で『あ、高梨に掛けてるんだな』と分かってしまい、私は静かに常務室を出た。
…高梨にも、ちゃんと…姓が変わった事実を…報告しなければ…いけないな…。
『またお会いできるお時間をいただけませんか?』
そんな内容のメールを思い出して、高梨とちゃんと1対1で向き合わなければいけない事を覚悟する。
これからプロジェクトでも顔を合わせるなんだから、変な対応は…していられないのだから。