この恋は、絶対に秘密!
だが、本当の名前はおろか、“愛してる”だなんて言葉は口に出来なかった。

心も身体も彼女を求めているのに、あと一歩のところで踏み込むのを躊躇ってしまう自分がいる。


……馬鹿だな。

そんな優柔不断な気持ちで抱いていることが、すでに彼女を傷付けているというのに。


綺麗な瞳から透明な雫がこぼれ落ちたのを見てそう気付いたのに、衝動を止められない俺は本当にどうしようもない男だ。



──でも、冷静になったらすべてを打ち明けようか。

俺の過去を知って、彼女がそれを受け入れてくれるかはわからないが。

このまま彼女を愛していいのかも──。



様々な想いを巡らせ、頭の中では“瀬奈”と呼びながら、俺は止められない熱を放つのだった。



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