この恋は、絶対に秘密!
さっきまでの穏和な空気は一切感じられない彼は、ゆらりと体を揺らしながら一歩、また一歩と私に歩み寄る。



「僕だって、あなたほど惹かれた女性はいないんだ…本気なんだ…」

「ひ…宏典、さん…?」

「僕にはあなたしかいないんです!!!」



思わず「ひっ」と声を漏らしてしまいそうになるほど鬼気迫る形相に、恐怖を感じた私は気が付くとその場から走り出していた。



「お、おい!瀬奈!」

「逃がしませんよ……絶対に!!」

「い……イヤぁ~~!!」



ドレスにヒールのまま、何も持たない状態で私は家から飛び出した。

まさに森のくまさんからスタコラサッサと逃げるかの如く。


いや、あんな童謡みたいにお気楽な調子じゃないのよ。

だって二人が追ってきてるんだから!


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