不誠実な恋
冷房の効いたデパートの中で、ただその存在を探すためだけにフロアを歩き回る。
何度も似たような店を覗き、その度に肩を落とす。湿っぽさが苛立ちを加速させ、その姿を見つけた時には開口一番で怒鳴り声を上げてしまいそうなくらいにまでなっていた。


一度正面玄関から外に出て、冷静さを取り戻すために何度か深呼吸をした。
連日降り続いていた雨は勢力を弱め、分厚く空を覆っていた雲の隙間からうっすらと夏の日差しが差し込んでいる。



「何処行ったんや、もぉ」



地下一階に繋がるエスカレーターの横。それが今日の待ち合わせの場所だった。


いつものように約束の時間よりも少し遅れてその場所に着いた俺は、遠目から見ても彼女の姿が無いことにすぐさま気が付いた。
何処に居ても、どれほど多い人数の中に紛れ込んでたとしても探し出せる絶対的な自信がある。だから敢えて人通りの多いこの場所を待ち合わせ場所として選んだのだ。


けれど、辺りを何度か見渡してもその姿は無くて。
待ち合わせの時間の数十分前には必ず約束の場所に着いているような女だから、何かあったのではないだろうかと心配にもなってくる。


何度も鳴らした携帯は、無常にも1コールもすることなく直ぐに留守番電話へと切り替わってしまった。
握り締めたままの携帯が熱くなってしまうほど熱を帯びた俺の掌は、次第に湿っぽさを汗へと変えていた。
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