月下の幻影


 月海はどう反応していいかわからず笑顔を引きつらせる。


「あ、でも、おやじ臭くはないですよ。和成様お若いですし……」


 月海が慌てて取り繕うと、和成は意外そうに目を見開いた。


「もしかして……私の年、聞いてない?」
「はい?」


 月海はキョトンと首を傾げる。

 和成は軽く嘆息すると、少年のような顔に苦笑を湛えて、月海にはにわかに信じ難いことを告げた。


「こう見えても私は三十九才なんだ。今年で四十になる立派なおやじだよ」


 月海は思い切り目を見開いて絶句すると、しばらくの間和成の顔を凝視した後、大声を上げた。

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