月下の幻影
「和成様は何をご覧になってるんでしょうか?」
唐突な質問に塔矢は怪訝な表情をする。
「時々、何もないのに突然振り向かれるんです」
それを聞いて塔矢は納得したように口元を緩めた。
塔矢もあの奇行を見たことがあるようだ。
「あれは多分、先代を捜しておいでなのだ。時々後ろにいるような気がするとおっしゃっていた」
月海は思わず眉をひそめた。
「亡くなった奥様がですか? 怖いじゃないですか」
塔矢は声を上げて少し笑った。