その恋、取扱い注意!
「じゃあいつなら良いの?」

「こっちから連絡するよ」

鼻先をピンと指で弾かれる。
痛くないんだけど、私は頬を思いっきり膨らませた。

「じゃ・あ・ね! お邪魔しましたっ!」

玄関の重厚なドアを勢いよく開けて外へ出た。
閉まる前に、湊の笑い声が聞こえた。

まったく、いつからこんなにからかわれる様になったの?

エレベーターに向かい、意地悪な湊を恨む。

そうだ! 外泊の理由を考えなきゃっ。

******

自宅の前で腕時計をチラッと見る。

8時半か。
お姉ちゃんとお父さんは仕事でもういないけど、一番厄介なのはお母さんだ。
専業主婦の母がいる。

「あら、美海ちゃん」

通りから、湊のお母さんの声がした。
振り返ると、にっこり笑顔を浮かべている。
薄紫のパンツスーツを着ていて、若々しく颯爽としている。

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