その恋、取扱い注意!
「安西さん?」

「えっ? う、うん」

適当に返事をする。

「あ、私約束があるから、お先に失礼するね」

カウンターと自分の場所をせわしなく片付け始める。

「お疲れ様。帰りにまだいたら絶対に見てね? 松下さんの彼氏」

すっかり外にいる男性が松下さんの彼氏扱い。
湊じゃないかも知れなくて、本当に松下さんの彼氏なのかもしれないけれど。

上司に挨拶して更衣室に駆け込む。
慌ただしく駆け込んだその足がビクッと止まる。

松下さんが背を向けて壁に掛けられた鏡を見ていたのだ。
結構な大きさの鏡に映る松下さんの目と目が、バチッと合ってしまう。
すぐに逸らせずにいたら、鏡の中の松下さんが唇に指をやって微笑んだ。
そしてくるっと振り向き「唇、腫れてないかしら?」と聞いてくる。

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