その恋、取扱い注意!
俺は敬一が経営するニューハーフの店『美人堂』で、ニューハーフ紅緒として手伝っていた。

敬一はこの店で稼げると思い、オープンさせたが、看板になるきれいなニューハーフがいなかった。そこで、大学の時に面白半分に周りが騒ぎ立て出場することになった女装コンテストで優勝した俺に『美人堂』で働けと言いやがった。

敬一の事情を知らなかった俺は怒りのあまり奴を殴ったが、なぜ俺にそんな話を持ちかけてくるのか解せなかった。その後父親が友人の借金を背負い自殺したことを調べ上げ、恥を忍んで女装することになった。

女装に関し、一番の問題はあれだ……「毛」だ。
もともと濃い方ではないが、長袖や丈の長いものの衣装を着てすね毛などを隠し、それ以外の見えるところは男のエステで除毛を定期的に施している。

難関大学卒、外資系金融トレーダー、都内に2LDKのマンションを持ち、順風満帆の生活を送っていた俺が女装……これは絶対に秘密だった。

この秘密を墓場まで持っていくつもりだったが……一番知られたくない相手がある日来店した。

隣に住む気になる女 安西 美海(ミミ)。
まさかミミが『美人堂』に現れるとは思ってもみなかった。

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