その恋、取扱い注意!
来店したのがわかったのは敬一に呼ばれた時だった。

若い女性の3人連れか……敬一がナポリタンを作るくらいだから、気に入った客なんだろうな。

俺はそのテーブルに行き、近くにいた2人に挨拶をし、視線をもう1人に移した時だった。良く知った顔が、はにかんだ笑顔で俺を見ていた。
その時、俺は不覚にも絶句して言葉が出なかった。

目と目を合わせてもバレた様子はないようで、俺は気を取り直して笑って挨拶をした。

そうだ。いつもの俺は軽い近視でメガネをかけている。今の俺の姿……紅緒はブルーの度付レンズだ。ロングウィッグもつけている。ミミにはわからないはず。

バレるとしたら声だな。
声を少し高めにするようにしたが、このテーブルには賑やかな明菜と敬一がいる。俺は会話をしなくても問題なかった。

しかし念のため、なるべくミミから見えづらい場所に座り様子を伺ったその時、心臓がドクンと跳ねた。ミミが身を乗り出して俺を見ていた。
だが、見ていただけで敬一と話し始めた。

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