その恋、取扱い注意!
お財布から1000円札を1枚抜き取り、払い終えた松下さんに差し出す。

「いいのよ。湊の妹みたいな貴方からもらえないわ」

ひらつく夏目漱石を松下さんは押し返して受け取ってくれなかった。

湊の妹みたいな私って……。

高いヒールを履いているのに歩くのが早い彼女の後姿を追いながら、更に胸の中がモヤモヤしていた。




「お帰り~ 松下さんとランチに行ったんだって?」

私が松下さんに誘われた時、久我さんは席を外していた。
誰かから聞いて、興味津々の顔で私を見ている。

「うん」

「どうして誘われたの?」

やっぱり松下さんが私を誘うのは何か裏があると、考えるのは当然だよね。
でも、このことはぺらぺらと話せるものではないから、苦笑で済ませる。

久我さんはすーっとイスを滑らして私に近づき、耳元に顔を近づける。

「嫌がらせだったら、相談に乗るからね」


にっこり励ます様な笑顔で自分の場所へ戻っていく。



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