その恋、取扱い注意!
午後は電話の問い合わせや、接客などで忙しくお客様の波が引いた時、再び高野先輩を思い出した。その途端、気持ちが落ち着かなくなる。

待ち伏せされていそうで、家に帰るのが怖い。
お母さんに適当に言って、来てもらおうか……。それともお姉ちゃんと待ち合わせて帰るか。

――結局、お姉ちゃんは婚約者の加藤さんと式場へ行く予定で、お母さんは友人と人気のディナーショーに行く日だった。
お父さんは出張中。

本当に待ち伏せされているのかわからないのに言えない。
私の考えは被害妄想で、待ち伏せされていないかもしれないのに。

いつものように最寄り駅の改札口を抜けた。
電車を降りてから、心臓がバクバクしている。

もしも、もしも高野先輩がいたら、きつく言ってやるのよ。

そう考えながらも、周りを見ないように足早に通り道である商店街を歩く。
商店街を抜けて、住宅街を歩く。

ここまで来たら大丈夫だよね。

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