あふれるほどの愛を君に

さあ、どうかな……。いや、できてないかもね。

否定も肯定もできない。
けど、誤魔化す術もない。

だったらどうしたいのかと言えば、いまの僕は、ただ逃げたいだけなのかも。

やっぱり情けない、ってまた思った。


「阿久津君」

「……」

「阿久津君!」

「ん? あ……悪い」

「そんな顔しないでよ。ね、帰ろ?」


ニッコリと白い歯を覗かせた星野が、前へ向き直りながらコツンとヒールの音を響かせた。

きっと、しんみりとしかけた空気を正してくれようとしたんだろう。

そういうとこも変わってないよな。さっきの告白だって三年前と同じ瞳をしてたし。

あの時だって一生懸命伝えてくれたのに、でもさ、ちゃんと答えなかったよな、俺。

言葉だけは返したけど、あの時だって逃げたんだ……。


ふーっと細く息を吐き出す。

何度も点灯と点滅を繰り返した信号機の青色を見据えて、左足を一歩前へ踏み出した。

視線を移動させる。

信号機、足元の白線、笑ってる横顔、パステルカラーのつま先……そのまま駅のあるほうへ運ぶ。

だけど僕の視線は、横断歩道のその先でピタリと止まった。

必然的に目が合った。
思わず息を飲んだ。


だって、そこには………

―――“彼女”がいたから。

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