あふれるほどの愛を君に

「カノジョは、高校の時の同級生で、えっと……星野光希、さん」


自分で嫌気がさすくらい、歯切れの悪い言い様だった。

気まずくって、隣に立つ星野を見ることも、ましてや目の前のサクラさんと目を合わせることも憚れた。

何もやましく思うことなんてないはずなのに、ひどく居心地が悪かった。

説明した通り星野は高校時代の友達で、それは例えばサトシと同じ間柄で。だから、隠すことも後ろめたいこともあるわけないのに。

でも僕の心は落ち着かない。
“後悔”―― そんな気持ちまで沸いている。

何に対して?
どんな心境から?

単に星野が女の子だから―――?


……いや、違う。

大きな理由は星野からの告白。好きだって言われたこと。

しかもかつては、僕の気持ちも向いていたことがあったから。

それとサクラさんとのことを言われたことも関係してて。指摘された言葉に、近頃の僕たちのことを重ねたんだ。

仕事のことや嫉妬したこと、年の差のこと……。


そして、さっきまで抱いていた感情のせいで、こんなにもやましく後ろめたくなってる。

二人で一緒に過ごす時間を楽しいって、その空気を楽だって思ったせいで。

< 137 / 156 >

この作品をシェア

pagetop