あふれるほどの愛を君に
「それに思ったの。いまって仕事上では一応ライバルじゃない? あたし達。
資料を持ち帰ることもあるし、これから残業も増えるだろうし。だから引っ越しは、社内プレゼン後にしようよ」
なによりショックだったのは、同棲の延期を提案されたことより黒木さんの名前が出たことだった。
「どうして、そんな話になったの?」
お茶を淹れるね、ってキッチンへ向かった彼女へ問う。
「え? あー、さっきお店で話そうと思ってたんだけど、忘れてて」
対面キッチンの向こう側で湯気を立てている彼女をまっすぐ見つめていた。
どうして、そんな話題をあんなに楽しそうにするのか疑問に思いながら。
「いや、そうじゃなくてさ」
マグカップを持って戻ってきた彼女がソファへかける。
「なに?」
「俺たちが一緒に住むって話が、どうして黒木さんとの会話に出てきたかってこと」
なんとなく、ちょっとだけ嫌な言い方をしてしまったかもしれない。