あふれるほどの愛を君に
でもサクラさんは、全く気にしてないようだった。
「この間の飲み会の時にね、そんな話になったの。恋人はいるの? って聞かれて……えっと一次会の時だったかな……。それとも二次会のカラオケで隣に座った時にー……」
苛立つくらい楽し気に話を続けてる。
「それと、ハルの誕生日なんだけど……ごめんね? ちょうどその日に出張が入ったのよ。だから、
ねぇ、聞いてる!?」
語尾を強められ顔を上げると、唇を尖らした彼女と目があった。
「聞いてるよ」
「そお?」
「俺の誕生日に出張が入ったんでしょ。仕事なら仕方ないんじゃない」
目を伏せて答えると、彼女は明るい声で返してきた。
「ごめんね。後でちゃんとお祝いしようね」
その時の僕は、胸の中でうごめく感情をただ噛みしめていた。そうするしかなかった。
堪える術もわからず、かといってあしらうこともできず。本音を隠して……――ただ、向き合うことから逃げたのかな。