あふれるほどの愛を君に
五月七日、連休明けの初日。
いつものように残業を終えた僕は、なんとなくそのままアパートに帰る気にもなれず、行きつけの居酒屋の暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませー! ……おう!」
近くのテーブルを片付けていたサトシが、僕の顔を見てニカッと笑った。
「なんだ一人?」
カウンターのいつもの席へ腰を降ろすと、何か言いたげな顔で僕の前にオシボリを置いた。
「まあね」
「おめでたい日だっていうのに、彼女さんとなんかあったの?」
顔をのぞきこまれて、なんとなく視線を背けた。
「なんにもないって。とりあえず生ちょうだい」
「はいよ!」
おめでたい日、か……。
オシボリの薄いビニール袋を破きながら溜め息をつく。
今日は、僕の22回目の誕生日だ。