あふれるほどの愛を君に
視線を移動されると、肩幅の広い長身の背中が映った。
彼だってたぶん、尊敬できる先輩だ。
人当たりが良く話術に長け、人を惹きつける魅力に溢れている。
一緒の所属になってまだ一ヶ月弱だけど、その仕事ぶりに於いては良い評判を耳にすることが多いくらいだ。
尊敬できる、尊敬すべき先輩。
そう言い聞かせる。胸の内に……。
「阿久津!」
その声に体ごと振り向くと、課長がドアの側で手招きをしていた。はい、と応えて急ぎ足でそっちへ向かう。
途中、立ち話をしている黒木さんの横を通りかかり彼と目が合った。
屈託なく、そしてどこか余裕を感じる笑顔を向けられ、なんとなく戸惑う。
そんなことを悟られないよう俯き気味に軽く会釈をし、足早に通り過ぎた。
その少し先、課長の隣には、さっきまで営業の田口さんと話し込んでいたサクラさんが立っていた。