my existence sense-神が人を愛す時-







妖精達が舞うように飛び交う森の中。
雨の雫は彼等を避けるように降りその羽を濡らすことはない。


ヒラリと舞う度にキラキラとした鱗粉を森に振り撒き、それを浴びた木々達は生命力を与えられたように生き生きとする。
一方木々達はその枝にたわわに果実を実らせては妖精達に命の恵みを与える。
茂る緑と降り続ける雨はこの森に侵入する者を迷わせ拒む。妖精達を守り隠す。

全てはネモフィラの加護だった。










「さぁ、もうお家に帰りましょう」


「えぇ、そうしましょう」



妖精達はその小さな手一杯に果実や花々を抱えて家路につく。

今居るのは森のほんの入り口。
彼等が暮らす街のは此処よりもずっとずっと深い森で外から来た者が容易に辿り着ける場所ではない。
本来ならば安全なその街から離れずこんな森の入り口まで出てくるようなことはしないはずなのだが、この数百年は五神ネモフィラが治めるこの神聖な森を侵そうとする者など現れなかった為にすっかり平和に慣れてしまって危険への意識は薄れていた。


元々戦いを嫌い武器なども持たずひっそりと隠れて穏やかに暮らすネモフィラとその信者である妖精達。
隠れることで守られてきた種の存続はその意識が薄れた今、危ういものになっていた。

だがそのことに誰も気が付いてはいなかった。






ヒラリッ。

小さな羽を羽ばたかせて木々に茂る葉の合間を擦り抜けて森の奥へ奥へと進んでいく。
舞う鱗粉と降りしきる雨の雫が共鳴し虹色の煌めきを生む。
妖精達の虹色の軌跡は暫く虚空を漂いそれから溶けて消えた。








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