my existence sense-神が人を愛す時-
ーーー







夕闇が迫る。
陽は落ちる毎にその色を濃くしながらやがて地平線の向こうに沈んでいく。


朝から騒がしかったノヴェリアの街が落ち着きを取り戻していく。

女達は夕食の材料を片手にお喋りを止めて家路を急ぎ、子供達は物足りなさを残しながらも親に手を引かれ温かい家の中へと帰っていく。
商人達も今日のところは店を畳み始めて街は夜の闇の訪れと共に眠りに堕ちていく。












.........。





「よーう、みんな集まってるかーい?」



陽が完全に地平線の向こうへと落ち切る丁度その頃。

ノヴェリア王国の中枢、国の要である城のその中。
多くの人の流れがあった昼間とは違い人気の薄れたその城のとある部屋に、何やら複数の人の気配が在った。





広々とした部屋。大広間。

ツルリとした大理石の床の上に深紅の絨毯が走り、その上では宝石と見違えるような煌めきを放つ大きなシャンデリアが空間全体を照らし出す。
壁には上手いのか下手なのか正直判らないような絵画達。
真ん中にポツリッと置かれた長いテーブルの上には美しく生けられた花と彩り鮮やかな料理やお菓子達が綺麗に並べられていた。



広間には複数の人の影。
その影は一つに纏まることもせずに点々と方々に散ばる。












「やぁ、ジーザス!
よく来てくれたね?」



「すまんすまん、髪のセットに手間取ってなぁ」



その内の影の一つ。
ちょうど部屋の中央辺りに居た見慣れた影が―――キルファが彼の存在に気が付きヘニャリと笑って手を振る。


たった今登場したジーザス。

確かに言われてみれば、グシャグシャで皺だらけの制服に寝癖全開の昼間の様相では無い。
ピシッと伸びた制服を跳ね一つ無く綺麗に整え片側に三つ編みで束ねられた男にしては些か長めの髪。そして微かに香るムスクの香り。
.........やる気満々である。








ガシッ。



「おいおいおいおい、キルファキルファキルファ!
で、で、で、噂の艶やかな髪と麗しい瞳の美女ってのは一体何処なんだよ、おーいっ!」



入るや否やキョロキョロしているかと思ったら、そういうことか。
気合の入れようもその所為か。

だが広間を見回すがそれらしき影が無くて堪り兼ねてキルファの肩を勢い良く掴み顔を引き寄せて問い詰める。







「あぁ、彼女ならまだだよ?」



「はぁあ?まぁーだぁーだとぉ?!
ッ!ま、ま、ま、まさかキルファお前!この純粋純朴な僕ちゃんに嘘をついた訳じゃあねぇだろうなぁ!?」



「あははは、大丈夫だよ。
嘘じゃないからさ?

..........。
えぇっと、あともう来ていないのはその子とあとバロンかな?
二人とももう来ると思うけれど」



「バロンなんぞどうでもいいっ!
はぁああっ!早く御目に掛かりたいぜぇ......はぁあ」




まるで主従関係を感じさせない会話。
キルファに王らしさも無ければ、ジーザスに王を敬うような配慮も無いので当然こうなる。






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