my existence sense-神が人を愛す時-
だがその揺らぎはほんの一瞬。
ラグナスは動じることなくその鋭い瞳で風の流れを見極め羽ばたく。
バサッ。
翼が風を切る激しい音が響くが、この砂嵐の中その羽ばたきを聞く者は居ない。
一面砂の視界の中でラグナスは真っ直ぐ前を見つめて何度も羽ばたく。
ゴォォオッ......フッ。
分厚く激しい砂の壁はラグナスもの羽ばたきにより突破される。
砂嵐の拘束から解放されて急に穏やかな空に出る。
後ろには今抜けてきた砂嵐が侵入者を拒むように激しく巨大な柱のように聳え立つ。
一方辺りは乾き切った草木が一本も生えない一面の砂漠で生き物の気配もなく静まり返る。
果てしなく続く砂の大地。
そのずっとずっと先にはうっすらと見える緑が。
砂漠の熱にぼやけてはっきりとは見えないがあれは蜃気楼などではない。
あの緑が国の境だ。
「行くとしよう」
ラグナスはその緑へと向かう。
ぼんやり見えるだけのその場所は人の足であれば何日も下手すれば何十日も掛かってしまうような道程だが竜の翼であれば他愛無い。
そう一言言葉を漏らしたと同時に羽ばたいた彼はもう遥か彼方へ。
広がる砂漠を眼下にグンッと加速を重ねる。
ぼやけていたはずの緑色が鮮明になってきてそれが砂漠の幻でないことを証明する。
一つ羽ばたく毎にどんどんその色は濃くなり、乾き切った空気が次第に僅かな湿気を帯びてくる。
再び下に目をやればちらほらと植物の緑が現れ始めて次第にその数を増やしていく。
砂漠から森へ。
ラグナスの瞳に映る景色が移り変わっていく。