穢れた愛


午後五時を過ぎ


待ち合わせた
PARCO前に佇み
陽炎に揺られる
青柳の姿


炎天下の中
二時間以上
立ち尽くした疲労に
朦朧とした顔


横瀬は青柳が見える場所に
愛車を停め
夕夏に声を掛けた


「夕夏ちゃん
 PARCO前に居る
 貧相な男
 連れて来て」


横瀬の言葉に
明美と顔を見合わせた夕夏


「なんで 夕夏なの?」


声を発したのは
明美の方で
ミラーに映る
横瀬の口元が微かに笑い


「面白いから」


愉快気な返事に
企みの罠が潜む


遊び慣れた横瀬の態度に
夕夏は足元を見られ
馬鹿にされている感情を抱き


「行けばいいんでしょ」


車から
不機嫌に降り
運転席の脇を通り過ぎると
窓を下げた横瀬の声が
夕夏の背中を押す


「俺の名前を言えば
 解るよ」


夕夏は振り向きもせず
車道を渡り
青柳の方へと
歩いて行った


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