穢れた愛


愛情などなく
青柳に躰を預け
抱かれたら


夕夏も大人の女性に
なれるのだろうか


自然と汗ばむ掌を
握り締めている事に
夕夏自身が気づいたのは


”家に帰れない”


初対面の男に
軽々しく告げてしまった
誘い文句を


取り消す言葉が
浮かんでこないからだ


夕夏の告げた
家庭事情など
青柳の耳を掠める事なく
打ち消され


真横を向いたまま
煙草を咥えている姿が
夕夏に屈辱を与え


「死んじゃおうかな」


どうでもいい
投槍な言葉を
呟いていた


< 60 / 111 >

この作品をシェア

pagetop