穢れた愛


まるで夕夏の言葉を
遮るように
青柳の携帯電話が
唸り出す


「今 何処?」


優先順位は
携帯相手に奪われ
取り残される夕夏


携帯電話から漏れる
微かな笑い声に
動じない青柳は
淡々と言葉を続けた


「女の携帯
 電源切っておけ
 GPSが 付いてる」


瞬時に血の気が引く
凶悪な犯罪めいた言葉に
夕夏は息を殺し


青柳の恐ろしさを
肌で感じ取る


『了解』


短い横瀬の応答


携帯電話を耳に当て
項垂れる青柳が
肩を落とし
溜息を吐き捨てる


『山越夕夏ちゃんに
 宜しくお伝えください』


嫌味掛かった
横瀬の遊び文句に
夕夏の顔を見た青柳


「今 何処だ」


強い口調で
横瀬に尋ね


笑い声と共に


『横浜』


電話が切れた
 
 
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