穢れた愛


長い沈黙


椅子に凭れ
投げ出した脚


繰り返される
重苦しい溜息と
煙草の煙り


青柳の視線は
夕夏を見下ろし
直視出来ない夕夏が
斜めに視線を落とす


黙ったまま
携帯を掛け始める青柳は
煙草を捻り潰し


「絵里」


電話相手の名前を呼び


「女を連れて帰る
 お前の部屋に
 泊めてやれ」


用件だけを告げ
電話を切る青柳は
伝票を持ち
席を立つ


そして
夕夏の意志を
確認などせずに
背を向けたまま
店を出る青柳の後を


夕夏は無言で
追い掛けていた



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