穢れた愛


景色に馴染んでゆく
青柳の後姿


錆びた鉄階段を
靴音を鳴らし
登る青柳は


僅かばかり振り返り
上着から取り出した金魚を
掌に乗せ


「死ぬなら
 コイツに命をくれ」


立ち止まる夕夏に
無表情のまま
背を向ける青柳は
部屋のドアを開け


「冗談だ」


部屋の中へ
消えて行く


数秒と掛からず
部屋から顔を出した
愛想のいい
大人びた女性が


何も疑いもなく
夕夏を招き呼ぶ


「いらっしゃい」


夕夏は驚く事ばかりで
戸惑いながら
笑顔も作れず
軽く会釈を返した


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