無題

お茶とほうれん草をいっきにながしこみました。

唾液がのどにつっかかって涙がでそうです。

不味いからではありません。
お母さんは、きっと、お父さんがもし毎日のように帰ってくるようになったら、今までのご飯ではなく、甘党のご飯をつくり、また私のことなんて、考えてくれなさそうだ。とおもいました。

口直しに真ん中に置いてあるサラダをとりました。サラダは、野菜をきっただけのなんのへんたもないものです。

でもこれもいつもと違います。野菜は、全然かわりはないのですが、ドレッシングがいつものごまだれではなく、青じそにかわっていました。

吐き出そうとしましたが、お母さんのあの笑顔が頭にうかびあがり、勝手に飲み込んでしまってました。


気持ち悪くなって、別の料理に手をつけませんでした。

私は立ち上がり、洗面所へ。
まず、口をあらい歯ブラシをとりだしました。歯ブラシの上に大量の歯磨きこをのせて、奥歯から磨いていきました。
歯、一本一本に時間をかけました。

全部磨き上げ、温かい水で洗い流しました。
鏡にうつった歯は、真っ白でした。

空気が自分の口に入っても、入ってないように感じました。

でも、あの気持ち悪さはまだのこっています。

私は、食卓を通りすぎ、階段をのぼりました。

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