無題


『音乃ちゃんごめんね、残り物なんかで…』

『いえっ…おばさんの料理は、残り物でもおいしいですよ。』

『あら、お上手ね。いっぱい食べてね。まだ残ってるから。』

『はいっ』

本当におばさんが作る料理は、おいしい。勝手に口にいれたら、喉を通る。
あいつがおばさんと同じ物をつくったら、雲泥の差でおばさんの勝ちだ。
あいつが作る料理は、この料理なんかより食べ物の質は、高いかもしれない。でも、気持ちの入れ方を比べるとおばさんの方がずっと高い。
おばさんの料理には、愛情がいっぱいいっぱい入っている。それは、1口食べただけでわかる。
あいつの料理は、見た目だけだ。


『とっても美味しかったです。ごちそうさま。』

『もうちょっとでお風呂あくと思うから、あいたら勝手にはいってね。』

おばさんは、白い大きなタオルと小さいなタオルと杏子さんのパジャマを渡してくれた。


私がお風呂から上がると凛ちゃんがとびついてきた。

『音乃ちゃーん。今日お泊まりするんでそ?凛といっちょにねよぉ』

まだまだしたたらずの凛ちゃんの話し方は、初々しくてかわいいです。

『そうだよ。』

『凛のお部屋だよね?』

『どこだろ?ウフフ。』

『凛のお部屋じゃなきゃダメ』

凛ちゃんは、泣き出しました。まだまだこどもですね。

『凛!音乃ちゃんは、凛のお部屋で寝ないよー。』

柊くんが凛ちゃんにそういいました。柊くんは、優しく凛ちゃんの頭をなでました。

『音乃ちゃんは、兄ちゃんの部屋で寝るんだ。』

柊くんは、凛ちゃんをフォローするようにいいました。しかしこっちにすれば、とても恥ずかしい言葉でした。
幸也の顔も私の顔も赤くなっています。
幸也は、私と目をあわすともっと顔を赤くしました。


『2人ともざんねーん。音乃ちゃんは、お姉ちゃんのお部屋で寝るんだよぉ。……ねっ?』


杏子さんは、最後に私にウィンクをしてきました。

『はいっ』

私もウィンクを返しました。杏子さんのナイスフォローです。その場の空気がもとに戻りました。


その後、みんなでテレビをみました。
久しぶりのバラエティー番組です。
いつも家では、ニュース番組しかみないので、なんだか新鮮でした。

たのしい時間は、どんどん過ぎていきました。

『もう12時前だからねなさい。』


歯磨きをし終えて杏子さんの部屋に入りました。
杏子さんの部屋は、とても片付いていていらないものはおいてありませんでした。

本棚にも机にもマンガが一切おいてません。
数学A、国語、古典、クローゼットの中の服もみっちり綺麗にならんでいます。
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