冷たい彼

「違うわ、『初めじゃそうでも今はお前が好きだ』…きっとそのような言葉がほしかった。その一言さえあれば沙彩ちゃんはあなたと別れるなんて…言わなかったでしょうね」
「…まだ、あるのんスか…?」

「えぇ。それと“好き”の一言を言ってない、これが一番大きかったかもね。私だけが皇雅さんを好き、そう言う気持ちが沙彩ちゃんの心を支配していったのよ…。これえだけよ、皇雅は?」

「俺は…女を信じられなくなった。
杏子のことがあってから、初めて…本気になった相手が杏子だったんだ。でも…幸せな時間は続かず、杏子は消えた、だからもう2度と女に本気にならない、そう決めたのが杏子からもらったあのピアスだった。
でも…沙彩は、別れようと思ってもできなかった、惹かれてく自分がいたんだ。けど…そのたび杏子が夢に出てくる…また女を信じるの?
ってな…笑えるぜ」

「……」

「俺は、沙彩を好きだと認めるわけにはいかなかった。でも気付けば、やったこともねぇ
誕生日を祝ったりデートしたり…してた自分がいた。…だが、けっきょく悪いのは全部俺だな」


「そうね…」


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