ラブランディング
「そいえばナツんとこ、一足遅い新人が来たろ?」
「ッ…!!っげ、げほっ!げほっ!」
「おー、大丈夫か。キムチの粉が喉に入ったなー」

ご飯も食べ終わって、食後のビールとおつまみをソファで隣がけになって楽しんでいたところ、ユウの突然一言に咳き込む。どうしてわかったのか知らないけど、彼の言うとおり、さきいかについてる辛いパウダーが気管に入ってしまったのだ。しかも、辛いから痛い…

冷たいビールを喉に流し込めば、少しだけ痛みが和らぐ。炭酸が少しチクチクとするけど、だいぶマシだ。

…そう、咳き込んだのは、別に沖くんの話題に動揺したわけじゃない。自分にそう言い聞かせないといけないような気がしてた。

「入ったけど…なんでユウが知ってるの?」
「広報部の奴らが、すげーいい大学出の期待の新人取られたーっつってたから」
「あぁ、だからか」

やっぱり、沖くんは期待されてるんだ。課長のあの入れ込みようも、どうして一度配属された部署からこんな短い時間で別のとこに異動できたのかも納得いく。

私の言葉に、きょとんと目を丸くするユウ。

「課長がね、えらく喜んでて。今日なんか午後の仕事他の人に回せ、って言われてフロア案内。オリエンテーションとか初日にやってるだろうに」
「へぇー。んじゃ、ナツが教育係に任命されたってことか」
「…まぁ…そう、かな」

沖くんの名前があがって、今日の彼との会話を思い出して、少し憂鬱な気分になった。
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