ラブランディング
どうやら、焼肉に添えるわかめスープを作ってるみたい。猫舌の私じゃ想像できないくらい熱そうな汁をおたまから直接味見して、ちょっと頭をかしげては塩を探しだす。

あんまり私に構ってくれないので、後ろから抱きしめてやった。

「…大変です藍原さん、背中に悪性のこぶができてしまいました」
「そりゃー大変だ。腹減ってんのかこぶ」
「減ってるこぶ」
「すぐ出来るこぶ」

ひっついてたまま、キッチンの周りをうろうろするユウの邪魔をして、こぶの遊びをするのもいつものこと。

バカらしくて、人には言えないような小さなことだけど、こういうのがすごく嬉しい。私が回した腕を強めると、お腹が空いたという催促だと思ってか、ぽんぽんと子供をなだめるみたいにしてくれる。

声を荒げる喧嘩も、相手が何を考えているのかわからない不安もない。

それと引き換えに恋という名の甘酸っぱい何かを失ったとしても、それは安い代価だ。

そんなことをぼんやりと考えながら、こぶになった私はひたすらユウにしがみついていた。
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