ラブランディング
「…で、こっちが自販機…って、広報部のフロアと配置はそう変わんないでしょ?案内するってほどもないよね」
「そうですね。でも、奈月さんにしてもらうから特別ですけど」

その言葉に、頭を抱えたくなる。こんなことを言われるのは、これで何度目だろう…数えるのも億劫になっていた。

デスクで話してた時もかなり突っ込んだ言い方をしていたと思っていたけど、あれでも人目を気にしてた方だったらしい。二人きりになってからというものの、二言目にはこんなことを言われてどう反応していいか分からなくなる。

絶対、男の扱いに慣れてるとかいうのは彼の勘違いだ。だって、本とにどうしていいのかも、うまいかわし方も思いつかない。

だからさっきから、私の答えはまるで壊れたラジオのように、リピートしっぱなし。最初は自惚れてるようで心配だったけど、ここまで来たら言っておくしかない。

「あのさ、さっきも言ったけど、私ちゃんと付き合ってる人が居るっていうの、聞いてた?」
「聞いてますよ。っていうか、有名じゃないですか。営業の藍原さんでしょ?」

ユウの名前が出たのはこれが初めてて、彼からそれを口にしたのに驚いた。

「もう三年で、同棲してるとか」
「そこまで知ってるの?」

別に、会社の人がそれを知っているのは不思議じゃない。ユウは私達のことを隠そうとはしないし、社内でも顔が広い方だ。新社員と交流することも多いから、入ってきて間もない子にも伝わってるのは毎年のこと。

ただ、さっきから恥ずかしいことを言ってくる彼がそれを承知していることに、困惑していたのだ。
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