ツラの皮
チッ、
折角近くにいるってのに、なんで一人で歩いてんだろーな、俺は。
小川の脇に続く遊歩道は温泉巡りのために柔らかな街灯が煌々と灯っていて、風呂好きな女性の集団や、宴会帰りとおぼしき人がチラホラ歩いている。
風呂もそこそこに旅館に向けて歩いていた俺の前方にも一人。
距離が近づくにつれ、俺は目を瞬かせた。
どれも同じような浴衣姿で、髪なんかあげたりしているが、見間違えるはずがない。
「オマエ、さっきは随分失礼な態度を取ってくれたもんだな。」
足早に近づいていって後ろからホールドヘッドをかますと、鈴は飛び上がらんばかりに驚いた。