ツラの皮
古傷に触って、一層アイツの存在が恋しくなった。
今更感傷に浸る気はないが、傷があるからこそ貴重だと思える存在。
足早に散策道を進んでいくと程なくして展望台に辿り着いた。
木々の間に見える展望台を仰ぎ見て、薄く目を細める。
最上フロアの手摺りに鈴の姿がある。
喜び勇んで展望台の階段を駆け上がた俺は、聞こえてきた声に足を止めた。
「―――たし達、付き合ってたの。」
雪乃…………?
足音を忍ばせて階上にそっと顔だけ出す。
手摺りに寄りかかっている鈴の横に雪乃の姿があった。
風に靡く髪を押さえて、景色に目を当てながらポツポツと言葉を繋げていく。
「丁度、尾瀬監督の前回の作品の頃……。その少し前のドラマで私の知名度もちょっとは上がってたけど、その当時はまだまだ売り出したばかりの新米で、世間の目もあってお付き合いを公には出来なかった。」