蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


化粧台の鏡に映る自分をぼんやりと見つめる。
泣きはらして腫れた目は、もうほとんど元通りに戻っていて安心した。

昨日の夜、数年分の涙を流したから、もう腫れるまで泣くこともないだろうし。
もしもそれでも涙が止まらなかったら、花粉症だって嘘でもつけばいい。

昔は季節病だったらしいけど、今は一年中何かしらのアレルギーが出るらしいから、そのせいにできる。
そうしておけば、課長だってもう腫れた目の理由を聞いてくることもないだろうから。

私は……この持て余した気持ちをどうすればいいんだろう。
人を好きになる気持ちは課長が教えてくれたけど、忘れ方は習ってない。

この先誰かが教えてくれるのかな、なんて考えて目を伏せた。
誰かが、なんて想像もつかないし、考えたくない自分に気づいて。

いつか知美が運命なんて言葉を使っていたけれど。
この恋が本当にそれに当てはまるなら、溢れ続けるこの気持ちも説明がつくかもしれない。

可能性をなくしても尚、課長だけを求める、この気持ちも。



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