たとえ愛なんてなかったとしても
「ねえ」  


「は、はい!?」



テーブルの下でキャシーの手を振り払えば、またやつがイタズラをして、それを退けて、静かな戦いを繰り広げていたら。

一番バレてはいけない俺の彼女から声をかけられ、心臓は飛び出しそうになるし、変な汗まで出てきた。



「お茶ある?」


「あ、ああ......、お茶な。
はい」



一瞬焦ったけど、どうやら気づいてはいないらしい。

すぐにカバンからペットボトルのお茶を取りだし、ミヒに手渡す。



「あたたかいお茶がいい」


「温かいのがいいの?
じゃあ後でスタッフに頼んでおくよ」



しかし、冷えきった冷たいウーロン茶ではお気に召さなかったらしく、あっそりそれを返された。

スタッフに頼んでおくと言っても不機嫌な顔をされ、とりあえず冷たいのじゃだめ?と聞いてみても嫌と言われる。


まずい、今日のミヒは機嫌が悪い。

やっぱりバレたか?
もしくはエリックさんのこと?
それともただ単に気分が良くないだけか?


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