たとえ愛なんてなかったとしても
「おひさしぶりです。ミヒです」


「まぁ......本当に?あぁ......。
もっと近くにきて」



私の母だと言うその人は、声をかけるとベッドから体を起こし、口をあんぐりと開けた後に、弱々しく笑って、私を手招きする。


興味深そうにしていた看護士に部屋から出てもらって、言われるままに彼女のベッドに近づいた。



「こんなことになってしまって、あなたにも迷惑をかけてごめんなさいね」


「いえ、......とんでもないです」



昔の一重の私によく似ている彼女は、写真で見た時よりも細くなっていて、一目見て衰弱しているのが見てとれた。

近づかないと、声も聞き取りづらいぐらいで......。


元気な姿で再会したなら、いっそのこと思いきり罵ってやれたのに、こんなに弱々しい姿を見せられたら、何を言っていいのか分からなかった。


握りしめられた手を振り払うこともできず、握り返すこともできず、ただただ居心地が悪い。
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