恋の味はチョコの味
――惨恋橋(さいこいばし)
「………」
なんか、どうでも良くなってきた。彼には彼女がいた。それで答えはもう決まっていた。
「ゆーい。」
ふいに声をかけられ振り向くとそこには香平がいた。
「お、お前泣いてんのか?」
「はは…やっぱ私バカだ。チョコを渡すことばかり考えて彼女がいること考えて無かったよ。」
「やっぱり、あいついたんだな。あいつは自分の事あんまり話さないからな。」
香平は私の横に来て橋の手すりに寄りかかった。
「こーへーは知ってたんだ。」
「まぁ、確信は持てなかったけどな。で話によると、渡せなかったんだろ?どうすんだよ。」
「捨てるよ。私にはもう必要ないから!!」
私はチョコを鞄から出し川へ投げ捨てた。
「バカ!!お前何やってんだよ!!」
香平がそう叫んで鞄とコート、ブレザーを脱ぎ捨てて川へ飛び込んだ。
「香平!!」私は香平の持ち物を持ち橋の下まで降りた。
「何やってんのよ!?今、真冬なんだよ!?」
「う、うっせーなどっかのバカがこれを捨てるからだろーが!!」
「だって…」
「それに、これを捨てちまったら、お前が大事にしてきた気持ちまで捨てることになるだろ?」
「じゃあ、どうすれば良いの!!もう分かんないよ!!頭ん中ごちゃごちゃして!!」
今まで押さえてきた感情があふれでて涙が止まらずに流れ続ける。
「だったら、俺がもらってやるよ!!」
「え!?」
私は自分の耳を疑った。
「どうせこんななりじゃ俺以外食えるやついねーよ」
「うん…ありがとう。」
香平は私を優しく抱き締めてくれた。
私、やっと気付いた。人を好きになるのは外見や中身じゃないんだ。自分の事を大切に思ってくれる人がいること。私の大好きな人。大好きだと思ってくれる人。この人の気持ちを絶対忘れちゃいけないんだ。
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