蒼碧
お兄様の姿が完全にいなくなってから、くるりと私のほうへと向き直ったお姉さまに、私はこれからくるであろう痛みにグッと歯を噛み締めた。



「この、クソ女っ!」


「う…っ、」



足を思いっきり踏みつけられた。


いつもなら頬にくる痛みが、突如場所を変えられたことに驚くと共に、


痛さのあまり、声が出た。


お姉さまは、私の髪の毛を掴んで


顔を近づけた。



「感謝しなさいよ?あのことは言わないでいてあげたんだから、ほら、お礼は?」



ギシギシと私の髪をひっぱりあげるお姉さまに、涙を浮かべたまま、



「あ……りがとう、ございます…」



私が謝る姿を見ると、お姉さまは満足したかのように笑った。



「うふふっ、あのことがお兄様に知れたら、きっともう安芸なんて誰も見向きもされなくなるわね。あ~おかしいっ」



あはは、と笑いながらお兄様が歩いていった同じ方向へと消えていくお姉さまに、静かに頭を下げた。
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