【完】結婚させられました!?
「もちろん俺にもくれるでしょ?」
去年もくれたんだし、とニッコリと笑う
音夜君を見つめる。
そうか。そういえば、音夜君にも毎年あ
げてたんだっけ。さすがに中学生になる
と、堂々とは渡せなかったけど。
「うん、あげるよ」
「ほんと?楽しみにしてるわ!」
犬っころみたいな人懐っこい笑顔を浮か
べて、ニカッと笑う音夜君。
義理だけどね、なんて思いながら。でも
それには触れずに。
音夜君の時折みせる"男"の表情が、苦手
だった。
だからあえて、自分からそれを引き出す
ような事はしないって、決めたんだ。
───……そして、バレンタインデー当
日。
「先輩!」
「ん?おお、心優」
放課後、もうすでに弓を構えていた先輩
を呼ぶと、先輩は弓を降ろし、僅かに微
笑んで私を見た。