【完】結婚させられました!?
クシャリ、と前髪をかき揚げて、苛立ち
を募らせていたら────……
「お、とや……くん…」
不意に、名前を呼ばれて。
起こしたのかと思って表情を窺えば、や
っぱりそれは寝顔で。
───なんだよ。タイミング良すぎだろ
、コノヤロウ。
今のたった一言で、すごく幸せになるな
んて。
頬が、緩むなんて。
「俺ってば、単純すぎ……」
ニヤける口元を覆いながら、ふいと彼女
から目を逸らした。
不意討ちは、ズルい。
そんな舌足らずな声で。そんな可愛く呼
ぶなんて残酷だ。
胸のドキドキが、消えないから。
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