聴かせて、天辺の青

トイレから出て行ったら、海斗が心配そうな顔で待っていた。


「河村さん、大丈夫? 気分悪い? 急にいなくなるからびっくりしたよ」


私にもたれる河村さんの顔を覗き込む。河村さんは小さく頷いて返した。


「海斗こそ、どこに行ってたの?」

「煙草吸ってた、誰も吸わないから他の場所で」


海斗はむっとしたように答えて、手を差し伸べる。そして私から引き離すように、河村さんの腰に手を回して支えた。


「私、河村さんを送るから、皆に伝えて……」

「いや、俺が送る。約束してたから、瑞香は皆の所に戻って伝えて。俺も帰るって」


言い掛けた私に、海斗はきっぱりと言った。河村さんは申し訳ないと言いたげに、私に頭を下げる。それなら仕方ないか。


「わかった、皆に言っておくね。気をつけて」

「ありがとう、瑞香も気をつけて」

「ごめんね、瑞香ちゃん、皆にも謝っておいてね」


謝る河村さんを支えながら、海斗はゆっくりと私に背を向けた。


さっき、河村さんは何を話そうとしてたんだろう。あんなに苦しそうな顔をしていたけど、大丈夫だろうか。皆の所に戻りながらも、河村さんのことが気になって仕方ない。


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