聴かせて、天辺の青
いつものように、和田さん達が賑やかに朝食を済ませて出かけていった。
和田さん達とたわいない話をしていると、沈みかけた気持ちがゆっくりだけど確実に浮かび上がってくる。あの独特な口調、訛りのせいだろうか。
単純に笑っていられるし、それだけで胸で支えていたものが消えて、気持ちが楽になれる。余計なことを考えないでいられるのが、何よりもいい。
「ねえ、おばちゃん。彼はまだ寝てるのかなあ? もし寝てるなら、急に掃除始めたらびっくりして飛び起きたりしないかなあ?」
おばちゃんと一緒に朝食を頂きながら、ふと思った。
体調を崩して寝ているところに、けたたましい掃除機の音が飛び込んだら、さすがに驚くだろう。体調を崩していなくても驚くに違いない。
「ああ、そうね……とりあえず先に様子を見てこようか? それとも、後で私が掃除しておこうか?」
きょとんとした顔でおばちゃんが言う。
いやいや、そういう意味で言ったんじゃない。
なんだか気を遣わせてしまったみたいで、悪いことを言ってしまったみたいで、申し訳ない気持ちになってくる。
「ううん、いいよ。私が見てくる。もし寝てたら、夕方帰ってきてからするから、ね、おばちゃんは気にしないで」
慌てて否定したら、おばちゃんはくすりと笑った。