天使な悪魔
妖魔・・・今一番聞きたくない言葉


見上げた先には黒のブラウスに青い天然石が嵌め込まれたシルバーのネックレスを下げた彼が居た。



妖魔の話してる・・・ってことは・・・


「雫・・・さん!?」


何でこのお店知ってるの?突然の来店に唖然としてしまう。


でも、先ず助けて貰った御礼を言わないと――


「分かるんだよ。血の匂いで。」



まるで心の声を見透かしたかのような表情で微笑んだ。



――人間の血って良い香りがする――



昨日突然抱き寄せられた記憶が蘇り、頬が熱くなっていくのが分かった。


「何、一人で赤くなってるの?」


雫さんが笑いだす。


この人、悪魔そのモノだ!


「ふっ・・・。可愛い。」


心にも無いことを・・・そうやって女の子何度も口説いてたんだろうな。


「ごめんね。反応が面白いからからかいかくなっちゃって。」


「そろそろ戻りますので。」


腹立つ。兄弟でもこんなに違うのだろうか。泪さんの礼儀正しさ見習って欲しいくらい。



冷静に踵を返すと、


「待って。」


突然、雫さんに呼び止められてしまう。どうせ大した話じゃないんだろうし、立ち止まる必要もなかったかな、なんて考えていると――



「その髪留め、今日も付けてるとはな。ちゃんと俺から直接謝りたかった。泪に行かせたことも。あんな言い方したことも――」



「えっ・・・?」



最初に会ったのは雫さんだったんだ。そのことを泪さんも隠して――
・・・

容姿は生き写しでも口調、雰囲気が違い過ぎだし、不自然だとは思ってたけど・・・


私に髪留めを渡したのは、雫さんではなく――




「すみませーん!注文をお願いしたいんですけどー。」


お客さんに呼ばれ、その場を離れざるを得なくなる。



「はい。今伺います。」



もしかして雫さん、わざわざ謝りにここへ・・・・・?
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