キャバクラ探偵遥奈
ゆき
「…駄目だった」

あっき〜
「どういう事?」

ゆき
「…私、今日17才の誕生日なの」

あっき〜
「おめでとう!
えっ?待てよ…
まずいじゃん
コンパニオンの仕事やっちゃ」

ゆき
「…17才の誕生日までに、お父さんのタイムを抜く事出来なかった」

あっき〜
「お父さんのタイム?」

ゆき
「…お父さんは、バイクレーサー
でも死んじゃった」

あっき〜
「そうか、お父さんはバイクレーサーだったんだ
タイムって、まさか…」

ゆき
「…そう
ほへと坂のタイムは
お父さんが16才の時に出したタイム」

あっき〜
「そういう事か
亡くなったお父さんのタイムを
同じ16才までに、更新する
そういうレースなんだ」

ゆき
「…やめた
私には才能が無い」

あっき〜
「何言ってんの、才能あるって
それにまだ17才だよ
これからだって」

ゆき
「…お父さんとの約束なの」

あっき〜
「約束?」

ゆき
「…お父さんは、ほへと坂の神と言われてた
そのお父さんのタイムを抜く事が、バイクレーサーになる条件
お父さんとの約束」

あっき〜
「そんな…
ゆきちゃんは、それでいいの
本当に、諦めちゃうの?」

ゆき
「…私、バイク好き
でももう、いい」

あっき〜
「駄目だよ
そんなんじゃ!
お父さんとか、関係ないじゃん
好きなら続けないと
駄目だからね!」

ゆき
「…約束」

あっき〜
「そんな事しても、お父さん喜ばないよ
ゆきちゃんの好きな物、お父さんのせいで奪ったって
お父さん、天国で悲しんでるよ
続けなよ」

ゆき
「…今日はありがと
私行くね」

あっき〜
「やめたら、駄目だからね!
あっき〜との約束だからね」

ゆき
「…約束」


ガチャ ブルーンブルーン


ゆき
「…あっき〜
さよなら」


ゆきは、すがすがしい笑顔で去って行った

私もその場を去り、鬼怒川を後にした

ゆきは、バイクレーサーの道を諦めたのだろうか…


そしてまた一週間後
私は鬼怒川へやって来た

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