ベストマリアージュ
せめて、キスくらいはして帰らなきゃ、来たかいもない。


「わり、こんなのしかねぇや」


コトンとテーブルに置かれたのは、缶コーヒー。


自分はもう開けて飲み始めてる。


「ありがとう」


掴んでみると、結構冷えていて、冷蔵庫に入れていたんだとわかる。


冷たいのが苦手な私は、それをまたそっとテーブルに戻した。


「やっぱ、ダメ?

なんか他の持ってきてやろうか?」


そんな私を見て、また立ち上がろうとしたさとしを、私は手で制した。


「大丈夫!ちょっとだけ冷たかったから、常温になるの待ってるだけだから」


「そ?」


「うん」


少しだけ沈黙。


「あのさ」


「あのね」


同時に言ってしまって、黙りこむと、さとしも一旦黙って、先に言えよと私の言葉を待った。


「さっきの……人なんだけど」


「あぁ、優也?」


「うん……こっちで知り合ったの?」


「そ、こっちの店に元々いて、たまたま隣の部屋だっただけ」


「ふぅん……」


「なんか不満そうだな?」


「そのわりに仲いいなって思って……」


「はぁ?別に普通じゃね?」


どうやら、『優也』が思ってるほどには、さとしは眼中にないらしい。


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