君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)


「あの・・これは?」


初めて見るのか、差し出された珠を食い入るように見つめて人狼に質問している。


「これは水竜の鱗の成分を結晶化させた珠だ。火竜の毒消し作用がある」


それに答えた人狼の言葉に、一斉に降り注がれた視線の先は水色の珠。


「これで、王子を蝕んでいる火竜の毒が消えるのですか!?」


慌てて確かめるルイスに、こくりと頷いた人狼は


「時間が無い。早くせねば、間に合わなくなる。」


王子の様子を見れば、呼吸も荒く苦しそうだ。

間に合わないと思ったのか、ルイスに渡そうとしていた水竜の珠を握りしめると王子の口の中に押し込んだ。

あまり大きくない珠だが・・・


「意識のはっきりしない王子に、珠なんて飲ませて大丈夫なのか?」


喉に詰まる方が心配になってきた。


「唾液と混ざると溶けるから心配はいらぬ。後は、様子を見るしかない」


水竜の珠が王子の口の中で溶けた事を確認した人狼は、王子の痣に視線を走らせる。


どれくらい沈黙が続いたのか・・・


王子の呼吸が穏やかになってきた。

体を確認すれば、僅かだが王子の様子に変化が見られ、濃かった痣が少しずつ薄くなってきている気がする。

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