二面相
兄の ビールを持つ手が止まる。
私は 黙って 頷いた。
「なんでもっと早く、きちんと言ってやらん。思春期は 何かと難しい時期だぞ」
兄はそう言うが、いつ話したって、いいタイミングなんて あるわけない。
大樹の父親は、生きているといえば 生きているが、大樹を授かってからは、音信不通だった。
彼は大樹を産んだことも、授かったことすら、知らないだろう。
当時、彼は 一つの夢に 挫折し、やっと次の夢を見つけたばかり。
私は 彼を本気で好きだったから、彼のせっかく見つけた夢を 途中で諦めさせることはできなかった。
彼の遺伝子を受け継ぐ子供が お腹にいるというだけで、私には充分過ぎた。
子供だった私は、そんな 自己満足に過ぎない意識で大樹を産んだのだ。
私は 黙って 頷いた。
「なんでもっと早く、きちんと言ってやらん。思春期は 何かと難しい時期だぞ」
兄はそう言うが、いつ話したって、いいタイミングなんて あるわけない。
大樹の父親は、生きているといえば 生きているが、大樹を授かってからは、音信不通だった。
彼は大樹を産んだことも、授かったことすら、知らないだろう。
当時、彼は 一つの夢に 挫折し、やっと次の夢を見つけたばかり。
私は 彼を本気で好きだったから、彼のせっかく見つけた夢を 途中で諦めさせることはできなかった。
彼の遺伝子を受け継ぐ子供が お腹にいるというだけで、私には充分過ぎた。
子供だった私は、そんな 自己満足に過ぎない意識で大樹を産んだのだ。