『武士ドルが斬る!?』
〈後編〉
帰蝶を真っ直ぐ見つめて濃君の想いの丈を伝えると一緒力なく笑い寂しげな瞳で答えた。
「―――帰蝶……。
この名前は…彼の名前でした。
彼は身分の違いから明智の姓を名乗る事も出来ず私の母の侍女として斎藤家で生まれ生まれた時から…私を守るように宿命づけられ共に育ちました………。
もちろん…彼との間に特別な感情も芽生えていたのも嘘ではありません………。
でも彼に自由をあげたかった……。
明智の姓も名乗れずじまいなのに…家督争いに巻き込まれ命も狙われる有り様…。
そんな状態から救ってあげたかった…。
そんな時に殿との縁談が持ち込まれて…私からも明智からも自由になれると思っていたのに…彼は私の代わりに濃姫として身代わりになってしまった…。
ずっとそれが心残りで…彼が濃として生きるなら私は帰蝶と名乗ろうと思っていました。
――せめて名ばかりでも誰かの記憶に呼び止めてほしいと思い…。」
再び私からお椀を受け取り容器の中に料理を注いだ。
「そうだったんだ……。」
濃君についての帰蝶の想いに胸が締め付けられたのは…きっと殿との置かれている状況が重なったからだろう…。