月下の誓約

 6.恋心、女心



 佐矢子を見送った後、先輩隊員たちはさっそく和成にかけ寄り、取り囲んで口々にからかった。


「かわいい子じゃないか、和成」
「おまえ、女に興味ないのかと思ってた」
「とうとう結婚すんのか?」


 和成は黙って目を合わせないようにあさってを向く。
 後からやって来た塔矢が一喝した。


「こら、おまえら仕事しろ! 和成、間者は?」


 間者から奪った無線電話を塔矢に渡しながら、和成は雑木林の奥を指差す。


「むこうに。全部で五人です。四人は斬りました。ひとり統率者と思われる男は峰打ちで捕らえております。これは彼の電話です」


 塔矢が頷いて目で合図すると、先輩隊員たちは和成の示した雑木林に入っていった。

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